[財政の崖]海外各紙が悲観的な理由
米「財政の崖」の期限が31日に迫る中、共和党のベイナー下院議長と共和党指導部は26日、「上院がまず行動を起こす必要がある」という声明を発表した。一方、民主党のリード上院院内総務は下院共和党に、年収25万ドル未満の世帯について増税を回避するという既存の上院の案を可決するよう呼びかけた。なお、オバマ大統領はハワイでのクリスマス休暇を切り上げ、27日に議会と瀬戸際の交渉を行う予定だ。
こうした状況下、ガイトナー財務長官は26日、年末に債務上限超過を避けるため「臨時措置」を講じると表明した。これにより、債務超過に陥るまで約2カ月の時間を稼ぐことができるとみられる。ただ、「税制と歳出政策が不透明な状況のため、これらの措置がどのくらいの間有効か予想できない」とも述べた。
海外各紙は、期限ぎりぎりまで交渉が続くと見ており、それぞれの切り口から分析した。
まず、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は3つのシナリオを想定した。1つ目は、歳出削減、給与税率の増加、AMT(代替ミニマム課税)などの主要な決定を先送りし、オバマ大統領側が主張する富裕層増税で部分合意する。2つ目は、来年税率が増加した後合意し、前述の3つの主要な課題に対処する。3つ目は、すぐに合意せず(財政の崖が訪れ)、劇的な不況を引き起こす。どのシナリオも不確実性を長引かせ、消費者や企業の不安が高まり、来年の経済はかなり減速すると悲観的に報じた。
フィナンシャル・タイムズ紙も、議員らが、政府と議会が合意する可能性は少ないとみていると報じ、「我々は疑いなく崖に向かう」という民主党議員の悲観的なコメントを掲載した。オバマ大統領がクリスマス休暇前に議会に促した縮減予算案が実現すれば財政の崖を避けることができるともみているが、格付け会社や企業幹部、投資家の間で同国の長期的な予算機能不全を心配する声が高まりそうだと分析した。
ニューヨーク・タイムズ紙は視点を変え、今後は上院に焦点が移り、共和党のマコネル上院院内総務がキーパーソンとなるとみている。マコネル氏はこれまでも政治的な行き詰まりを打開する上で重要な役割を果たしてきた。しかしマコネル氏は2014年に再選を目指しているため、一歩下がってベイナー下院議長とオバマ大統領の動向を見守る姿勢をとるかもしれないと同紙は懸念している。
31日の期限が迫る中、大統領と共和党議員に具体的な歩み寄りが見られず、総じて悲観的な報道となった。ギャラップ社の世論調査でも、財政の崖を回避可能と予想した人の比率が小さくなってきている。